
駐輪場で自転車の無施錠を減らすには、どんな看板を置くのがいいか。それを確かめようという3カ月間の実験結果が報告された。
福島県警や、鈴木あい・福島大学特任准教授、国の科学警察研究所犯罪予防研究室の島田貴仁室長が実験した。
グループは昨年8月末から12月初旬、福島駅前やいわき駅前など、県内で盗難の多い14カ所に4種類の看板と横断幕を掲示。事前に1~3割ほど確認されていた無施錠の自転車数の推移を見た。同種実験は他県でもあるが、今回は最大級の規模という。
メッセージには「ナッジ理論」という行動経済学の考え方を採用した。ナッジは「そっと後押し」などと訳され、禁止などを押しつけずに、特定の行為をそっと奨励できる手法として行政の現場で注目されている。
今回は「カギをかけよう」という従来型のほか、ナッジを活用した3種類のメッセージを用意。多数派の圧力に着目した「ここでは90%以上がカギをかけています」、被害を防ぐ行為のコストに目を向けさせる「カギかけの1秒が自転車を守ります」、受け手に感謝を伝える「いつもカギをかけていただき、ありがとう」の3種類だ。
結果は、すべてのメッセージに無施錠を減らす効果があった。ただ、駐輪場利用者への事後アンケートでは、「ありがとう」を覚えている人が6割を超え、4~5割にとどまるほかのメッセージより印象を残していた。
鈴木さんは「『ありがとう』は効果があると言えそうだが、なぜなのかは分からない。さらに研究を進めたい」と話した。